子供たちは境界線を知りません。運転は慎重に。
「子供たちは境界線を知りません。運転は慎重に。」
これはドイツの交通安全に関する広告です。日本やドイツだけではなく、世界中どこでも共通していえることだと思いますが、子どもたちには、境界線も停止線もありません。きっと、これを読まれているあなたも子どもの頃を思い出していただければ、「そうだそうだ、自分もそうだった」と心の中で思うのではないでしょうか。
日本国内においては、例えば信号機がない横断歩道があった場合、横断歩道付近で立っていると、親切なドライバーが「ここは歩行者優先だ。先に行かせてあげよう」と、停止してくれる場面もよく見かけます。しかし、多くの諸外国ではそんなことおかまいなしですね。交通安全に関する法の整備やルール作りはもとより、中には道路の舗装もしているのだかしていないのか分からないような国や地域もあるでしょう。このような国や地域では、「歩行者優先」などと考え、歩いていると、平気で自動車にはねられたりします。
そのような国や地域の子どもたちは、友達と遊びに出かけようとしたとき、おそらくこう母親に声をかけられるでしょう。「あんた!クルマにひかれて死ぬんじゃないよ!」そこまで口をすっぱくして言われているかは定かではありませんが、少なくとも日本の交通事情より歩行者が保護されていないことを考えると、「クルマには気をつけなくてはならない」という危機意識は日本より高いでしょう。
日本のようにインフラや法が整備され、「歩行者優先」が当たり前になっていると、歩行者側の危機意識が薄れてきてしまう感があることは否めません。私自身も幼少の頃を思い出してみると、母親から「クルマには気をつけるのよ」と言われた記憶がありますが、実際に幼少の頃の私が特別クルマに注意したような記憶はありません。
当時の私が言われている言葉の意味を本質的に理解できないのは、経験していないし、これから遊びに行くことで頭がいっぱいだったからなのかもしれません。そして、今の私のように大人は、道路があればそこを歩きますし、線が引かれていればその線をまたがないようにし、枠があれば枠からはみ出してはいけないと思い込みますが、子どもは違います。
むしろ、道が舗装されていない箇所を好んで歩きますし、入ってはいけない所に入ろうとし、出てはいけない枠から出てしまうものです。皆さんも思い出してみて下さい。きっと、思い当たるフシがあるのではないでしょうか。
つまり、子どもには、境界線も停止線も意味が分からないものであり、無いものとあまり変わりません。冒頭でご紹介したドイツの交通安全広告は、そんな幼少時代を思い出させ、大人になったドライバーの交通安全意識を高めてくれる非常に秀逸な広告だと思います。是非ともこのようなクリエイティブで訴求性が高い交通安全広告が日本でもどんどん広まってほしいと切に願います。