交通事故の加害者が負う法的責任〜民事責任と行政上責任
今回は、交通事故の加害者が負う法的責任(民事責任と行政上責任)について書いていきたいと思います。
交通事故の加害者になってしまった時に負う法的責任の一つに民事責任があります。これは国からの制裁という側面は一切なく、単純に被害者の被害に対する金銭的な補填をするという性質のものです。
ですから例えば被害者の為に毎日庭の清掃をすることを義務づけるなど、身体的な拘束を受けるような責任を強制的に負わされることはありません。自由契約で加害者がそれを了承すれば話は別ですが、意思に反して強制されるということはありません。
ではこの民事責任について詳しく見ていきます。
交通事故の加害者が負う法的責任:民事責任
法律的に考えると、交通事故の民事責任は民法上の不法行為責任ということになります。これは他人の利益や権利などを侵害した時に問われる責任ですが、交通事故の場合には被害者の車などの財産や身体的な損害を与えることで不法行為となります。
その不法行為の責任をどういう形で取るのかということですが、冒頭で述べたように加害者被害者の両者が納得するならば例えば庭掃除や食事の支度に毎日通うなどとして加害者に一定の行動をとることを契約で義務付けることはできますが、相手が納得しなくとも最終的に強制できる方法として民法が規定しているのが損害賠償という形です。
損害を賠償するということは、金銭で解決を図るということです。
車など財産を壊されたらば修理代やその代替車を入手するための資金を提供する、治療の為病院にかかるなら治療費を支払うなどです。また精神的損害を被ったということでこの損害に対しても手当が要求されることがありますが、こちらは少し性格の違う「慰謝料」という形で支払われます。
いずれにしても、民事上の責任は最終的にはこのように金銭で解決することになります。各損害に対する賠償金額の算定などはこれまでの交通事故事例などから積み重ねてきた一定の参考データがあり、「大体このくらい」という金額が提示されるのが一般的です。
ただし専門家を使わず被害者が一方的に高い額を提示することがあるので、すぐに了承せずに交渉する必要があります。
交通事故の加害者が負う法的責任:行政上の責任
交通事故の加害者が負う責任のうち、最後の一つが行政上の責任です。この責任は社会秩序を乱したことによる制裁という性格を持つもので、行政官庁が加害者に対してペナルティを課します。刑事責任と違う所は、刑罰の適用があると前科が付いてしまいますが、行政上の責任を負っても前科とはなりません。
両者は公的な立場(司法や行政)から制裁を受けるという点では同じですが、身体拘束を受けることもある刑事責任と比べると行政上の責任は制裁の度合いは緩やかです。
行政上の責任とは、日本の免許制度は点数制を取っていて、違反事実ごとに減点するべき点数が決められています。一時不停止や信号無視などでも少しずつ点数が引かれていきますが、交通事故でも同様です。減点の対象になったり、大きい事故では一発で免許取消という制裁を受けることもあります。
減点の度合いはその事故の程度によって異なってきます。
また免許制度以外でも一定の反則金の納付義務を負わされるなど金銭的なペナルティもあります。
行政上の責任と刑事責任、民事責任の関係
行政上の責任は他の各責任とは全く異なるシステムで動いていると思って下さい。刑事責任を負ったから行政上の責任が免除されたり軽くなったりすることはありませんし、逆もしかりです。民事責任との関係についても同様です。
被害者に多額の弁償を行ったからといって免許の減点がされなくなるといったことはありませんのでしっかりペナルティを受けます。例外として、加害者が刑事上の責任を負う場合、検察官が加害者を裁きの場にかけるか否かの判断において、被害者との示談が成立していることをもって責任追及の度合いを弱めることがあります。
具体的には、被害者の被害が軽微で、示談も成立しており、本人の反省の度合いも強い、また飲酒運転などの悪質な違反歴もないとして不起訴にすることはあり得ます。
ただ基本的には三者の関係は独立していて相互に干渉しないというのは変わりません。