逸失利益と労働能力喪失率について
昨日は東京も結構雨が降りましたね。最近では北海道の気温が過去にないくらい高いそうで、やはり地球がどうかなってしまっているのだろうか、と個人的に心配しております。さて、本日は逸失利益と労働能力喪失率についてお話したいと思います。
逸失利益の計算式
逸失利益の計算式は、
年収×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
【計算例】
年収400万円、35歳のサラリーマンが交通事故により、後遺障害が残り、第9級10号に認定された場合。
▶労働能力喪失率は35%
▶35歳に対応するライプニッツ係数は、15.803
400万円×0.35×15.803=2,212万4,200円
上記例だと、2,212万4,200円が逸失利益になりますが、9級の自賠責保険金額は逸失利益と慰謝料を合わせても上限616万円ですから、残りについては加害者の任意保険もしくは加害者の自己負担になります。
労働能力喪失率について
労働能力喪失率の認定には、旧労働省労働基準監督局の通牒による労働能力喪失率が基準として使われています。これを参考にして被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼動状況、生活状況などを総合的に判断して決められます。
自賠責保険では、下の表の保険金額がそれぞれの等級の上限となります。後遺障害の保険金は、逸失利益と慰謝料の合計額で算出され、傷害に対する保険金の上限120万円とは別で支払われます。ただし、自賠責保険の性格上、これらはあくまでも最低限の補償ですから、被害者は自分で適正な賠償額を計算するか、もしくは、交通事故に強い弁護士に相談・依頼をしたほうが良いでしょう。
後遺障害等級自賠責保険金額
等級 | 保険金額 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|
第1級 | 3,000万円 | 100/100 |
第2級 | 2,590万円 | 100/100 |
第3級 | 2,219万円 | 100/100 |
第4級 | 1,889万円 | 92/100 |
第5級 | 1,574万円 | 79/100 |
第6級 | 1,296万円 | 67/100 |
第7級 | 1,051万円 | 56/100 |
第8級 | 819万円 | 45/100 |
第9級 | 616万円 | 35/100 |
第10級 | 461万円 | 27/100 |
第11級 | 331万円 | 20/100 |
第12級 | 224万円 | 14/100 |
第13級 | 139万円 | 9/100 |
第14級 | 75万円 | 5/100 |
介護を要する後遺障害等級別自賠責保険金額
等級 | 保険金額 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|
第1級 | 4,000万円 | 100/100 |
第2級 | 3,000万円 | 100/100 |
「差額説」と「労働能力喪失説」
逸失利益の考え方は、「差額説」と「労働能力喪失説」の2つの学説があります。差額説は事故前と事故後の収入の差を逸失利益とみなし、現実の減収がなければ逸失利益は認められないとする立場です。
労働力喪失率は収入の差額ではなく、後遺障害により労働能力の喪失・低下自体を損害と認める考え方です。裁判では、差額説が基本的に採用されていますが、被害者の個別の事情によっては慰謝料に上乗せして調整されることもあります。